大人のADHD

大人のADHD

 

近年では、発達障害の研究が進み一般的な病気として知られるようになりました。

なかでも、今注目されているのが発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動性障害)です。ADHDの症状は子どものころには見過ごされがちです。しかし、大人になったときにご本人やご家族が違和感を持つようになり、精神科や心療内科を受診されるケースは多いです。

ADHDのタイプ

ADHDの主な症状は、衝動性・多動性・不注意です。

ADHDのタイプ別に、どのような症状があるのかを見ていきます。            

多動・衝動性優勢型

衝動のままに発言してしまう、じっとしていられないなど、多動性や衝動性による症状が顕著に現れます。

このタイプの子どもは、授業中に席に座っていられないなどの問題行動を起こす場合があります。大人になると、席を離れたい衝動は抑えられる方が多くなります。大人のADHDでは、落ち着きがない・しゃべりすぎる・順番を待てないといった症状を訴えます。

不注意優勢型            

忘れ物をする・単純なミスが多い・時間を守れないなど、不注意が原因となる症状が現れます。

ADHDの患者さんとADHDではない方の違いは、これらのミスの頻度です。

ADHDではない方でも、上記の例のようなミスはするでしょう。しかし、大人になってもこのようなミスを頻繁に繰り返せば、社会生活や日常生活に差し障ります。

ADHDの症状によって起こる問題行動ですが、本人のやる気や誠意を疑われる結果となりかねません。

混合型

多動性・衝動性・不注意の症状が同程度に現れるのが混合型です。

 

大人のADHDに多い「不注意優勢型」

大人のADHDによく見られるのは、不注意優勢型です。

その理由について考えられる2点についてご説明します。

 

1.子どものころは症状が見過ごされやすく、受診が遅れるため

発達障害の一種であるADHDは、子どもの頃から症状が現れます。

しかし、不注意優勢型である場合は、多動・衝動型に比べると他人に迷惑をかけることは少なく、「注意散漫な傾向があるふつうの子ども」として見過ごされがちです。

本人が不自由な思いをしないようにという保護者のサポートや、教師や友人などの協力の結果、不注意症状が抑えられることもあります。

 

ところが、社会人になるとスケジュール管理やタスクの把握、与えられた仕事を時間内に完遂する能力が求められます。大人になっても不注意症状は続くため、社会生活を送るうえで様々な障害が生じ、「自分はADHDではないか?」と初めて気付いて受診するケースが多々あります。

 

2.成長するに従って多動の症状は軽くなる

正確な原因はまだ解明されていませんが、子どもの頃は混合型であった患者さんでも、成長するにつれて多動の症状が軽くなる傾向にあります。不注意の症状だけが残る結果となり、かえって不注意症状は目立つのです。      

 

大人のADHDに見られる状態や行動とは?      

大人のADHDの症状は、具体的にはどのような状態や行動に現れるのでしょうか。

また、環境など様々な要因によって症状には個人差があります。

ADHDの患者さんは、「怠けている」「努力が足りない」などと誤解されやすいです。

患者さん本人は、何とか状況を改善しようと自分なりに努力や工夫を重ねています。しかし、ADHDの症状のせいでなかなか結果につながらないのです。

不注意症状により現れる状態や行動

・単純なミスが多い、同じミスを何度も繰り返す

・スケジュールやタスクを頭のなかで整理して、優先順位をつけて行うことが苦手

・締め切りや約束を守れない

・忘れ物が多い

・物をよく紛失する

・物事に集中できない

多動・衝動性の症状により現れる状態や行動

・思ったことをそのまま発言する        

・衝動的に行動してしまう。

・落ち着きがない、貧乏ゆすりをする

・1日のなかでも気分のむらが激しい、一瞬で気分が変化する

・物事に熱中し過ぎてしまう(自閉症スペクトラムを併発している可能性あり)            

 

「もしかしたらADHDかも」と思ったときは

大人になってから、本人や家族、周囲の人が「もしかしたらADHDかも知れない」と気づいたときは、発達障害に対応できる精神科で1度相談してください。

いきなり精神科を受診することに抵抗を感じるときは、職場の産業カウンセラーや各自治体の発達障害者支援センターの相談窓口を訪ねる方法もあります。

大人のADHDの治療方法とは?

ADHDの治療は、大人と子どもで大きな差はありません。

薬物治療とその他の治療の2つに分けられます。ADHDは治療によって完治する病気ではありません。治療を行うことでADHDの症状を和らげ、社会生活や日常生活とスムーズに送れるようにすることが治療の主な目的です。

 

・薬物治療

大人のADHDでは、『コンサータ』と『ストラテラ』の2種類の薬物の処方が認められています。いずれも脳の中枢神経に作用し、ADHDの症状を和らげる効果があります。

患者さんから薬物治療の希望があれば行いますが、薬物治療は症状に対する対処療法に過ぎません。薬物療法を行いながら、環境調整やソーシャルスキルトレーニングなどを受けて、患者さんの生活の質を高めることが大切です。

 

・環境調整

環境調整とは、ADHDの患者さんが仕事や勉強などに集中して取り組めるような環境を整えることです。

大人のADHDでは、以下のような点に注意することで、ADHDの特性を活かした生活を送れます。

・集中力を削ぐポスターや張り紙などを、目の届く範囲から取り除く。

・スマートフォンのスケジュール帳やリマインダー機能などを利用して、予定を思い出させる。

・職場の上司や同僚などには、簡潔で短い指示を出してもらうようにお願いしておく。

・確実性を求められる作業は、確認やサポートをお願いする 

 

・ソーシャルスキルトレーニング

ソーシャルスキルトレーニングでは、良好な対人関係を築くために必要な技能を学びます。ADHDの患者さんはつい衝動的な発言をしてしまい、周囲の人の信用を失ってしまうことが少なくありません。それが対人関係を難しくする原因とも言えます。

ソーシャルスキルトレーニングでは、自分の発言が相手にどのような影響を与えるかを考えながら行動する方法を身につけます。

 

大人のADHDに遺伝的要素はある?

ADHDは遺伝するのかという問題は、以前から考えられてきました。親子でADHDの患者であるケースが少なくないためです。

しかし、ADHDの発症要因をすべて遺伝に求めるのは早計でしょう。

ADHDは、遺伝的要因や出産時の状況(母体内感染症の有無や未熟児)など、複数の要因が重なった結果発症すると考えられていますが、はっきりとしたことはまだ解明されていないのが現状です。

 

ADHDを抱えながら仕事をしていくために必要なこと

ADHDの疑いで初めて来院された患者さんの約半数が仕事を持っています。

治療を続けるなかで就職される方も多く、障害者枠で採用される方もいます。

ADHDの患者さんが仕事を続けていくためには、同じ職場の方のADHDの症状への理解が欠かせません。

ADHDの症状の特徴は、患者でなくても日常生活のなかでよくある現象(忘れ物やケアレスミスなど)だと言えます。そのため、「注意が足りない」「やる気がない」などと誤解されやすく、上司や同僚から厳しい叱責を受けた結果、それが自尊心の低下につながりかねません。

ADHDの症状は、本人の努力とは一切関係なく起こるものです。

しかし、患者本人の特性を理解し、能力を活かせる仕事を任せることで、問題が解決できる可能性があります。

また、ADHDであることを職場の上司や同僚が承知している場合は、患者さん本人がADHDの特性や症状について詳しく説明しておくことも、周囲の理解を得るためには大切です。

ADHDについて理解が得られそうにない職場だと感じたときは、ADHDであることを伝えずにおくほうが良い場合もあります。

ただし、自分が苦手な業務については伝えておき、いざという時にはサポートをお願いできる環境を整えましょう。

発達障害診療ならハートライン沖縄クリニック |沖縄県 那覇市